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Park Jung-eun

パク・チョウンさん

Park Jung-eun

People’s Solidarity for Participatory Democracy (PSPD)
Republic of Korea
Japan Mothers’ Congress


朝鮮半島の非核化に対する危機と挑戦

現在の北朝鮮の核危機は北朝鮮が核兵器の保有を誇示している点で、以前の危機とは異なります。韓国を含め周辺国も危機の解決に実質的に出ていないという点でも、以前とは異なります。このように核危機が悪化しているのは何故でしょうか。

北朝鮮に対する核先制攻撃の可能性を盛り込んだブッシュの核体制報告書(NPR)を挙げないまでも、北朝鮮は朝鮮戦争以後現在まで、20回以上もアメリカの核攻撃の脅威を受けてきました。紆余曲折の末に、北朝鮮の核兵器の廃棄と周辺国の相応する代価の提供、米朝・日朝関係の正常化などを合意した2005年9・19共同声明と2007年2・13合意が出されました。このような合意は朝鮮半島で戦争が正式に終結され、停戦協定を平和協定にかえる希望と楽観につながりました。

昨年2008年にも、北朝鮮は冷却塔を爆破し、文書を提出するなど核廃棄のプロセスに乗り出し、困難ななか北朝鮮のバンコ・デル・アジア銀行(BDA)口座の凍結問題まで解決したアメリカは、北朝鮮をテロ支援国家リストから削除しました。しかし、以後の米朝の間で核の検証の問題が生じ、そのような状況のもと、アメリカではオバマ政権が誕生しました。当然、北朝鮮との直接対話、核のない世界を公約したオバマ政権の対北朝鮮政策がどういうものになるのか、東北アジア諸国の関心が集中しました。しかし、オバマ政権が中東問題やアメリカの経済危機問題に集中し、対北朝鮮政策が本格的に示されないなかで、状況は重大な危機の局面に走り出しました。

オバマ政権の対北朝鮮政策が遅延するうちに、北朝鮮のアメリカ、韓国との葛藤は2009年3月北朝鮮を狙った韓米合同軍事訓練という形で現れた。続く4月、北朝鮮は宇宙空間の平和的利用の権利を主張し、長距離ロケットを発射し、国連安保理は北朝鮮を糾弾し北朝鮮に対する制裁の移行、強化を促しました。これに対して北朝鮮は6者協議への参加拒否を宣言し、5月には予告した2回目の核実験を強行しました。国連安保理は貨物検査や金融制裁などもっとも強力な対北朝鮮制裁に関する決議案を採択し、これへの反発として北朝鮮は、プルトニウムの再処理とウラニウムの濃縮に取りかかることを宣言しました。以後、6月の韓米の首脳会談で両国の大統領はアメリカの‘核の傘を含む拡大抑止’の公約を明文化し、‘自由民主主義と市場経済の原則に基づいた平和統一’を盛り込んだ未来ビジョンを発表しました。挑発と強硬な対応の悪循環のなかで、危機はいっそう高まりました。

北朝鮮のこのような強硬姿勢について、さまざまな分析が出されました。金正一国防委員長の健康悪化のため後継体制を構築し、内部の結束を固めようとするものであるという内部的要因がそのひとつです。しかし、北朝鮮の内部事情を核心的な要因として見るのは、しばしば周辺国が自分たちの責任を回避するための論理として利用するものです。6カ国協議で合意された‘北朝鮮の核兵器廃棄とアメリカ、日本との関係正常化’という等価交換のかわりに、‘関係正常化以後の核兵器の廃棄’、すなわち核保有国の地位でアメリカとの交渉にのぞもうとする意図であるという分析もあります。北朝鮮が後に非核化をすすめるとしても、核能力を強化し対米交渉力を高めると同時に、体制の結束も強めるという意図なのです。

その背景には核の検証の問題が、米朝の間でいまだに鋭い議論のテーマになっているし、新しいオバマ政府の対北朝鮮政策が目立たず、北朝鮮への重油の提供もまともに移行されていない問題もあります。また2008年、韓国の李明博(イ・ミョンバク)政権発足後、最悪の状況に置かれている南北関係も重要な変数といえます。非核開放3000(北朝鮮が核兵器を廃棄し開放の方向に向かえば、年間3,000ドルのGDPを達成させるという構想)を公約として発足した李政権は、北朝鮮の核問題の解決や南北関係の進展の前提条件として、北朝鮮の核兵器を優先することを要求し、南北交流協力と対北朝鮮交渉を担当している統一省を無力化させ、キム・デジュン、ノ・ムヒョン政権を‘失われた10年’と呼び、過去の北朝鮮に対する支援を行き過ぎと非難しました。そして前政権時代に南北が合意した6・15宣言と10・4宣言を事実上廃棄したのです。この間、去年北朝鮮の金剛山で韓国の民間人が北朝鮮の軍人による銃撃により死亡し、金剛山観光は中断され、韓国の104の中小企業が入っている開城公団も存続の危機にさらされています。現在北朝鮮は6・15宣言を守っていない韓国政府に対し、契約の無効化を宣言し、給与と賃貸料の値上げなど新しい条件を出しています。また、現代(ヒョンダイ)の職員が北朝鮮の体制を誹謗したとして抑留しています。結果として、李政権の発足以後、南北の間では、閣僚会談や離散家族の再会、食糧支援などが一度も実行されていません。北朝鮮の核実験後、韓国政府は対北朝鮮封鎖を意図したPSI(大量破壊兵器拡散防止構想)への参加を宣言し、これに対し北朝鮮は停戦協定の無効を主張するまでにいたっています。李政権発足後1年も経たたないうちに、南北関係は全面中断され、今は南北の間で軍事衝突が起きる可能性も危惧されています。

もう一つの挑戦は、南北が冷戦時代のように‘核をとおした抑止’の時代にすすんでるということです。北朝鮮の核兵器保有への対応として、韓国の核主権論まで提起されています。米韓首脳会談で核報復攻撃の可能性を前提とした核の傘の提供を文書化したことに続き、最近韓国政府は核の再処理をするための韓原子力協定の改定にのりだすと発表しました。

北東アジアにおける軍事費用の増大による悪循環と安保ジレンマ

朝鮮半島と北東アジアが直面している重大な問題のひとつは、まさに軍事費がますます増大していることです。過去10年間、世界の軍事費は65%も増え、毎年約10%ずつ増加しています。その中で6カ国協議の参加国の軍事費は、全世界の軍事支出の65%を占めています。戦争はアフガニスタン、イラクなどで起こっていますが、軍事産業の最大の顧客は、実際北東アジアの国です。6カ国協議で朝鮮半島と北東アジアの平和体制を議論するとしながら、実際には北東アジアでは過度な軍事費増大競争が脅威的にすすんでいるのです。

周知のとおり、アメリカの軍事費支出は全世界の41.5%を占めています。アメリカはまた北東アジアで覇権的な地位を守るために、韓国と日本により多く武器を販売し軍事費増大競争を煽っています。中国も武器購入への支出を増やしていますし、ロシアも国防予算を増やしています。長い間深刻な経済危機に置かれた北朝鮮は、相対的に安いけれど脅威的な核兵器の開発にのりだし、このような北朝鮮の選択は他の国の軍事費増大競争の口実になっています。日本は平和憲法があるにも関わらず、中国はソフトパワーの重要性を強調しながら、当てにもならない北朝鮮の在来式兵器の脅威まで軍事費増大の口実にした韓国も、財源がはるかに乏しい北朝鮮も、そしてロシアも北東アジアのすべての国が新しい兵器システムと攻撃能力の強化のために膨大なお金を投資しています。

具体的には、日本の国防予算は全体予算の1%という非公式的な上限が守られてきました。しかし、日本の国防予算は中国が非公式に日本の軍事費の規模を追い越した2006年以前まで、東北アジアの他の4カ国より多かったのです。また既にアメリカの次に世界で最高の防空自衛隊と海上自衛隊を保有しています。まるで平和憲法が無効力になるように、日本の自衛隊はアフガニスタンとイラクで多国籍軍を支援する活動を行いました。日本の防衛庁は省に昇格し、航空母艦、原子力潜水艦、長距離ミサイル、F-22ステルスといった武器を持とうとしています。また日本は北朝鮮の脅威に対応すると主張しながら、実質的には中国を狙ったミサイル防衛体制の構築に力を注いでおり、早期警報-早期対応に数十億ドルを投資しています。地上にはPAC-3迎撃ミサイルを配置し、海上でも迎撃実験を行使し、北東アジアで宇宙空間での軍事化ももくろんでいます。

韓国もキム・デジュン、ノ・ムヒョン、そして李政権と、国防予算を大幅に増やす政策は変わっていません。韓国は毎年国防予算を7-9%ずつ増やし、2010年の予算案だけ見ても国防予算が国家財政の15%を占めています。イージス技術を保有する国は、韓国を含めわずか5カ国にすぎません。このような環境は、結果的にロシアや中国にミサイル開発や防衛システムの向上に金をつぎこませています。中国は1,000億ドルの軍事費をとおして、経済力にみあう世界レベルの軍事力を保有しようとしています。アメリカはアルカイダやタリバンにたいして使用できなかった先端武器を開発し、軍事費支出を正当化するため、中国の脅威を誇張しました。このようなアメリカの例のない軍事費の支出は、中国の軍事費増大をあおりました。石油と天然ガスの収入、そして武器輸出で世界第2の武器取引の地位をとりもどしました。ロシアはスーパーパワーを回復するために軍事費を増やしています。ロシアの武器購入費用は2000年から2006年の間にほぼ4倍に増え、2015年までには兵器の半分を新しいものに変える予定です。最近7月13日、ロシアは射距離8,000kmにいたる弾道ミサイルの実験に成功しました。しかし、国際社会はこの事実に対し、北朝鮮のロケットほど注目しませんでした。このような国々に囲まれている北朝鮮は、国家予算の4分の1を軍隊に投入し、核兵器の保有にまで踏み込みました。

北朝鮮の核問題をめぐる葛藤の解決と北東アジア平和のための課題

問題は解決策がないことではなく、解決の意志と信頼がないことです。強硬な立場を固持している北朝鮮の態度が、南北関係でも解決の局面への転換をむずかしくさせているのは事実です。また周辺国も対話と交渉による問題解決の条件と環境をつくれていません。状況が困難だといって即効的で感情的に対応するならば、国家の外交政策は存在する理由を失います。

目標は明らかです。北朝鮮の核兵器保有を必ず阻止し、朝鮮半島における非核化の原則を守ることです。当然北朝鮮にたいしては、追加核実験や核の再処理を中断し、核兵器の放棄を促すべきです。同時に、北朝鮮が核兵器を放棄することができる条件もつくらなければなりません。

このような点から現在韓国と日本政府がとっている態度は、交渉の条件をつくる障害となっているようにみえます。韓国政府は南側の支援なしには北朝鮮体制が持ちこたえないと北の‘降伏’を内心では期待していますが、南側の対北朝鮮支援がまったくなかった昨年、北朝鮮は逆に高い経済成長率を記録し、食料状況も相対的に安定しました。韓国政府の対北政策の基調が変わるべきだという要求が、ますます説得力を得ています。まず、6・15および 10・4宣言を尊重し、実行することです。

日本も国内政治の手段として北朝鮮の脅威を過剰に誇張し、市民の不安をつくりあげているように見えます。北朝鮮に対する嫌悪感を煽り、軍事費増大や国内政治の手段として利用していては、北朝鮮の核兵器の廃棄を防ぐことはできないし、日朝間の敵対的関係の解消の助けにもなりません。北朝鮮による核物質の蓄積も憂慮されますが、日本は既に莫大な量のプルトニウムを保有しているだけではなく、今後もずっと生産できるという事実を認識しなければなりません。また、北朝鮮の粗末なミサイル能力にたいし、日本は宇宙ロケットを打ち上げるほどの精密なミサイル能力を持っていることも認識しなければならない。わざわざ、国防予算の規模や軍事力を比較する必要もありません。最近、東京都議選の選挙結果を含め、初の‘選挙を通じての政権交代’への可能性が予測されています。懐疑的ではありますが、日本の対北朝鮮政策に意味のある変化があることを期待します。

この件と関連して現在、参与連帯は国連での核軍縮、不拡散の議論と、韓国と北東アジア国家との立場を分析する活動を行っています。これは韓国政府が国際社会の核軍縮と不拡散に積極的に賛同するよりも、核兵器開発と使用禁止にすら消極的で、二重の立場をとっているということを知らせるための活動です。同時に北東アジアの軍事費増大の実態に対する監視と情報提供の活動も重要です。北東アジアの国々による熾烈な軍事費増大競争は、市民のくらしの質の向上を犠牲した結果でもあります。軍事費増大は互いの軍事的脅威を拡大するだけで、決して誰の安全も守ってくれないことを知らせなければなりません。特に国家予算の配分において、民生と福祉部門が犠牲とならないよう、最小限の国防予算の凍結を提案し、市民レベルのキャンペーンを展開しなければなりません。

参与連帯と平和軍縮センター

1994年に発足した参与連帯は、参加民主主義と人権、社会的な正義のための権力監視活動と朝鮮半島の平和や国際平和連帯活動を推進しています。2001年現在、15の部署と48人の専従活動家、そして10,350名の後援会員で構成されています。労働、福祉、経済改革と民生問題に対応する社会経済局、立法、司法、行政全般を監視する市民監視局、反戦、反核、軍縮運動を担当している平和軍縮センターと国際連帯活動を担っている国際連帯委員会、そして公益法センター、参与社会研究所が付設機関として置かれています。

平和軍縮センターは2003年に韓国での反核、反戦と軍縮、米韓同盟の民主化をあげて発足しました。主に北朝鮮の核問題と国防政策、対北朝鮮政策、米韓同盟の再編に関する政策などを監視し、政策提案をしています。そしてイラク、アフガニスタン、イスラエル-パレスチナなど国際紛争に対する監視行動や講演会、情報提供、PKO法問題にもとりくんでいます。その他にも朝鮮半島平和報告書を2年に1度出版し、昨年からは政府の国防白書に対応する‘平和白書’を出版するなど、平和と人権にもとづいた外交安保政策を提示しています。