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Susi Snyder(International Symposium)

2006年国際シンポジウム

2006年国際シンポジウム

婦人国際平和自由連盟(WILPF)事務局長
International Symposium
戦争も核兵器もない平和で公正な世界へ‐いま女性たちの連帯と行動のとき


女性と平和、国連

みなさん、このような重要な会議で話す機会をいただき、ありがとうございます。とりわけ新日本婦人の会で懸命に活動している方々と、私の日本への旅を支援してくださった方々一人ひとりに感謝します。このようにそうそうたるパネリストに加わって発言でき、とても光栄です。

今日は私の代表する組織の視点から見た女性の平和運動の歴史について少しお話し、それから国連でのNGOの役割と現在のアメリカの政策についてお話しようと思います。このあとの質疑応答に時間をとりたいので、私の発言はできるだけ短くするつもりです。どうぞ、私への質問があれば、それをメモしながらお聞きください。最後にみなさんからの質問に、できるだけお答えするように努力するつもりです。

まず、婦人国際平和自由連盟―WILPF-について、手短に紹介させてください。WILPFは1915年に発足しました。ある女性の国際会議に22カ国の女性約1300人が集い、すでにヨーロッパで猛威をふるっていた戦争をどうしたら止めることができるかを話し合ったことがきっかけです。この会議はオランダのデン・ハーグで開催され、そこで女性たちは自国の状況を議論し、今起きている紛争の拡大をどうしたらくい止められるのか、そして暴力的な紛争を防止できるのかを話し合いました。

これら女性たちは、会議の終わりに国際的な平和実現の計画を採択しました。そして代表団をだして各国をまわり、各国首脳に会い、この計画を採用してくれるように要請しました。この代表団の構成メンバーはいずれも、女性には選挙権がない国や、女性がいかなる政治プロセスにたいしてもわずかな影響力しかない国の出身者でした。

残念なことに、その当時も、現在のように、権力の座にある男性の多くは、女性が平和構築に大した貢献ができるとは思っていませんでした。ある男性は、戦争をたたかったこともない女性が、どうして戦争を止めさせられるかなど知っているわけがないと言いました。そもそも女性とは、男性よりも平和的な性格だという先入観があったため、これら女性の声は聞き届けられず、戦争は猛威をふるい続けました。

この戦争のあとまもなく、諸国が集まって国際連盟を結成しました。この時でもWILPFの会員の多くは、自国では依然として女性には投票権がありませんでしたが、WILPFは国際連盟に関わるようになり、人権や女性の権利、そして全面完全軍縮を要求したのです。世界中にいたWILPF会員は、全面完全軍縮のよびかけを支持する700万筆以上の署名を集め、それを1933年ジュネーブで開催された世界軍縮会議に馬が引く荷車で運び込みました。この軍縮会議は、全面完全軍縮計画に合意することなく終わりましたが、WILPFの女性たちは戦争の根本原因は何かを学び、それを伝え、二度と戦争が繰り返されないように活動を続けました。WILPFが発足してから91年になります。私たちはいまでも毎日、平和で自由な世界、全員が平等な世界、戦争が思いもよらないもになる世界をつくるために懸命に活動を続けています。

第二次世界大戦が勃発する前も、WILPFは20カ国以上で活動し、政府にたいし、互いに敵対している国に武器を売るのを止め、できれば、貴重な資源を武器や軍隊についやすことのないように要求していました。私たちはいまでも世界の軍事費の削減を要求の一つとして掲げています。

第二次世界大戦後、国連が創立されたサンフランシスコ会議の開催中も、WILPFの会員はその場にいて活動し、各国政府高官に、紛争の根本原因に対処できるような、世界大戦のような悲劇が二度と再び繰り返されることを阻止できるような機関をつくるように要請しました。私は、各国に軍事費削減計画をつくることをよびかけた26条が国連憲章に加えられたのは、WILPFの女性たちの影響力があったからだと考えるのが好きです。

国連憲章も世界人権宣言も男女の平等を認めていますが、こんにちの女性は依然として、ちょうど1915年のWILPFの代表団がそうであったように、平和構築の努力に自分たちの意見を反映させるためには大変な苦労をしなければなりません。国連安全保障理事会は不平等があることを認め、2000年10月に1325号決議を採択し、すべての和平プロセスに女性を加えることの重要性を認めました。

この決議が採択された背景には、特別協議資格をもつNGOのたいへんな活動がありました。ここでNGOに認められている2つのタイプの協議資格について説明させてください。

ひとつは国連広報局をつうじて認定されるNGOです。これらのNGOはオブザーバーとして会議に出席し政府代表と話すこともできますが、会議参加の主要な目的は国連についての情報収集と、収集した情報を会員をつうじて普及することです。これらのNGOは国連と専門機関についての認識を高めることを誓約しています。毎年9月、国連総会が開催される直前には、これら国連情報局NGOの世界会議があり、世界中から数百人の代表が集まり、交流し、情報を交換し、どうしたら世界中で協力して活動できるかを話し合っています。

もうひとつの国連NGOは、国連の経済社会理事会にたいして特別な協議資格をもったNGOです。このタイプのNGOは国連でおきていることにたいし、前者よりもはるかに強い影響力をもっています。WILPFや新婦人はこの特別協議資格をもったNGOです。つまり、私たちは経済社会理事会のもとにある委員会、たとえば女性の地位委員会、持続可能な開発委員会、社会開発委員会などの会議の議題にも影響力を行使できるのです。私たちは国連やその専門機関に積極的にかかわるとともに、各国および国際レベルで各国政府にも働きかけ、国連憲章にうたわれている目的の達成のために活動していることを証明してきました。私たちのようなNGOは4年毎に報告書を提出し、国連を支援するためにどのような活動をしたか、国連の活動にどのようにかかわったかを示すことが義務づけられています。

国連安全保障理事会にたいして影響力を行使し、第1325号決議を採択させたことは、NGO、特に女性のNGOがもつ力を示すすばらしい事例です。この決議の採択にこぎつけるには1年以上もかかりましたが、それにはいくつかの特定の段階がありました。国連でNGOがどのような活動ができるかを説明するための具体例として、それをご紹介します。

第一に国連機関での情報収集によって、どうしたら紛争後のプロセスに女性を参加させることができるか、その方法を明らかにします。NGOは、国連女性開発基金(UNIFEM)、平和維持活動(PKO)局、政治局などとの会談をおこない、基礎的な情報を集めました。この情報を活用して、紛争後のプロセスにどのように女性を参画させることができるかを示す提言書(ポジション・ペーパー)を作成しました。提言書のひとつは、平和構築プロセスの当初から女性が参画していた場合、排除された場合よりも、平和が長く続くことを証明した報告書でした。提言書を作成すると、それを各国政府に回覧させ、それについて協議する会談を設定しました。

NGOができる最も効果的な行動のひとつは、国連で各国の政府代表と会談することです。このような会談は国の政策を変えることはできませんが、各国の首都(中央政府)でおこなわれる議論に影響をおよぼすことができます。NGOの最も効果的な活動方法は、私が好んで「インサイド・アウトサイド戦略」(内と外からの戦略)とよんでいるやり方です。安保理決議の準備の際には、政府代表との会談はニューヨークの国連本部と、政策の策定や決定がおこなわれる各国の首都の療法で行われました。

会談にはさまざまなやりかたがありますが、(安保理決議をめざした)女性団体の連合体はそのうちのいくつかを用いました。ひとつは一部の政府とおこなった個別会談ですが、このような会談は政府の支持が得られると分かっているか、あるいはすでにその国の首都で決定したことを知っていて、それを強化したい場合におこないます。

もうひとつは、円卓会議です。この場合、NGOとしてはひとつの国の政府と協力して、複数の政府の非公式会談をセットし、特定の問題にしぼって話し合います。このような会談は、通常はオフレコで、事前に具体的な提言書が作成され、話し合いのたたき台として回覧されていると、とてもうまくいきます。第1325号決議の準備過程でも、このような円卓会議が何回かおこなわれました。

最後のタイプの会談は、第1325号決議の採択を確実にするために使った形式で、アリア式会議と呼ばれています。これは正式記録には残らない安保理メンバーとNGOの非公式会議で、ひとつないし複数のNGOが安保理の作業に関係のある情報を提供することができます。このタイプの会談は、特定の決議の採択を確実にする、あるいは決議をめぐる議論に情報を提供する、あるいは安保理が取り上げるべき平和や安全保障にたいする脅威を指摘するためには非常に効果的です。アリア形式の会談は、必ず安保理の理事国のひとつの政府が設定し、多くの場合、非常任理事国の政府が主催します。2000年10月23日にも、国連安保理はこの形式の会議を開きました。発言者したのはイシー・ダイファン(WILPF)、ルス・メンデス(グアテマラ全国女性連合)、ファイザ・ジャマ・モハメッド(イクォリティ・ナウ)およびイノンゲ・ムビクシタ・レワンキア(ザンビア国会議員)でした。この会談は、安保理メンバーに和平プロセスに女性を参加させる必要性についての特定の情報を提供しました。発言者のひとり、ルス・メンデスは当初グアテマラでの和平プロセスから排除されましたが、数年間たたかって、ついに参加を勝ち取った女性です。ルスはじめ女性たちの話は、安保理メンバーを強く感動させ、彼らは公開討論会をおこなうことに合意したのです。

この安保理の公開討論会というのも重要な手段のひとつで、NGOがその有効性をあますことなく発揮できる場所でもあります。公開討論会では、安保理メンバー15カ国だけでなく、どの政府も発言することができます。NGOは、事前に手紙を回したり、個別会談をもったり、政府代表のスピーチに加えてもらう文を提案したりして、各国政府のスピーチに効果的に影響力をおよぼすことができます。WILPFでは、小国の政府ほどスピーチの内容への提案を待っていることが多く、本国の首都への問い合わせができるように、こちらが余裕を持って情報を提供しておけば、喜んで公開討論会で発言してくれることがわかりました。2000年10月24日におこなわれた女性、平和、安全保障についての公開討論会では、41カ国の政府が発言しました。その1週間後、安保理は満場一致で最初の個別テーマ決議である「女性、平和、安全保障決議」を採択しました。

安保理決議はすべての国連加盟国に拘束力をもつため、国際法をつくる1番の近道です。しかし、決してこれが唯一の方法というわけではありません。国連には他の機会もあります。国連総会、6つの特別委員会、経済社会理事会のもとにある委員会、それに新しく設置されたばかりの平和構築委員会や新しく選出された人権理事会などがそうです。

悲しいことに、現在国連は、多くの方向から攻撃を受けています。それは特にアメリカによる攻撃です。国連は各国政府が国の大小や貧富に関係なく、平等に発言でき、国際法の支配を尊重している世界で唯一の場所です。しかし、この数年間、アメリカは国連の過半数の決定を遵守することを拒否し、自らが世界に広めていると誇らしげに宣言している民主主義を受入れることをこばんでいます。その最も顕著な例が、あの違法なイラク戦争です。

アメリカは国連で改革の先導役をはたしていますが、これはそれほど新しいことではありません。国連憲章が採択されたとほぼ同時くらいから、国連改革については議論がありました。しかし、現在、アメリカが進めようとしている改革は、もしそれが実現すれば、過去60年間にわたって国連がおこなってきた良い仕事を大きく損なうことになるかもしれないのです。

国連は「戦争の惨禍をなくす」ための機関であると同時に、国連開発計画によって貧しい国の開発を促進し、ユニセフ(国連児童基金)によって児童を保護し、ユニフェムによって女性の権利を促進し、国連軍縮研究所によって軍縮を研究し、国連環境計画によって環境保護に深く関わっています。また、国連人権委員会は過去60年間、人権の促進と擁護の国際基準を設定する機関として機能してきました。それを今、アメリカは設立から5年以上経過したすべての国連機関について、そのすべての権限を合理化するという観点から見直すことを提唱し、すでにその合意をとりつけているのです。残念ながら「合理化」とは、多くの場合、これら国連の専門機関や計画で、アメリカの政治家が気に入らない可能性のあるものを廃止するという外交上の暗号なのです。

国連を変質させるためにアメリカが使う戦術は、道義にかなっているとはとても言えません。アメリカは、自分の意見がとおらなければ、国連への分担金の支払いを停止すると脅しています。これはまったくまちがっています。国連は多くの良い活動をしています。それはどれもお金がかかります。アメリカやアメリカの影響下にある国が分担金を支払わなくなれば、国連の計画は続行できなくなり、多くが「南」側に住んでいる数百万の人々が、その被害を受けることになります。

その良い例が、国連人権委員会の廃止です。アメリカはこの委員会を廃止し、かわりに人権理事会を設置するという合意がない限り、分担金を払わないと脅しました。人権委員会は非の打ち所のない機関ではありませんでしたが、人権について基準や規範を設定する場でした。また、NGOが人権侵害について各国政府の注意を喚起できる場であり、国連のなかでもNGOの影響力の最も強い機関でした。これがいまやかわってしまい、私たちもまだこの新しい理事会がどのように運営されるのか、あるいはNGOがどのように理事会の作業に関わることができるのかさえ分からないのです。アメリカは理事選挙に立候補することをこばみ、舞台裏で他国の政府をつうじて影響力を行使することを選びました。

アメリカはいくつかの方法で他国政府に影響力を行使しています。それは、ニューヨークあるいはワシントンで各国政府と会談するという通常の外交ルートによることもあります。また、他国の首都に代表団を派遣し、そこで会談するということもあります。あるいは、財政援助をストップすると脅すやり方もあります。たとえば北朝鮮に約束した重油のようなエネルギー援助から、占領下のパレスチナで選挙で選ばれた政府にたいする人道援助など多岐にわたるものです。さらに、通商関係をちらつかせたり、アメリカの市場の一部開放を約束したりして、アメリカの計画に同調するよう説得するという方法もあります。また、米軍を利用することもあります。これは必ずしも戦争をするためではなく、脅しをかけるためです。

外交を裏で支える、あるいは何らかの外交提案を押しつけるために軍隊を用いるやり方は、国連の精神に真っ向から反するものです。強い軍隊をもつことは国連の活動に関与する必要条件ではありません。というわけで、ここで日本国憲法第9条の問題についてお話することにします。

日本が常任理事国として安保理入りを求めていること、またそれが9条を撤廃する理由であると主張していることは誰でも知っています。しかし、日本が国際平和・安全保障の大義に貢献するためには、なにも攻撃用の軍事力をもつ必要はないのです。実際には、攻撃用の軍事力をもたないで日本が常任理事国になることができれば、その方が地球全体の将来にとっては、ずっと良いことなのです。

日本は世界経済で大きな飛躍を成し遂げました。そして多くの人が、日本がこれほどの経済発展をしたのは、国の資源を大量に軍備に振り向けることを禁止している憲法をもった世界で最初の国だからだと考えています。日本が憲法9条を撤廃し、攻撃用の軍事力を増強することになれば、それは国際平和安全保障の維持をうたっている国連憲章の掲げた目的に逆行することになります。日本が世界の安全保障に貢献できることを証明したいと真剣に望むのであれば、憲法9条を維持し、それによって、単にことばで平和を語るのではなく、自らの行動で平和への道を示すべきではないでしょうか。

私は日本の多くのNGOが9条を守るために懸命に活動しているのを知っています。私はそのことをみなさんに感謝します。世界には、私の国を含めて、みなさんの9条をまもる努力を国外から支援しようとがんばっているNGOがたくさんあります。私たちは国連で集まった時には、NGOとして9条を語り、どうしたら9条を守れるかを話し合っています。

NGOが共同して活動すれば、変革をおこすことができます。国際法をつくることだってできます。安保理の1325号決議で私たちがやったことを見てください。NGOが力をあわせれば、9条を守ることができるし、すべての人に正義を実現することで平和を築くこともできるのです。

ありがとうございました。